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α1 IIと巡る野生動物撮影の旅

自然写真家 野口純一 氏

α Universe editorial team

「CP+2025」で自然写真家の野口純一氏にお話しいただいた内容や発表作品を、α Universeでも特別にご紹介。「α1 II」で撮影した野生動物の作品を紹介しながら、圧倒的な解像感やAIによる被写体認識を活用したAFなど、カメラの特性をわかりやすく解説。さらに、待望の新レンズ「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」で撮影した印象なども語ります。

野口 純一 / 自然写真家 1968年、埼玉県生まれ。沖縄県在住。2輪・4輪のエンジニア時代にバイクツーリングで訪れた北海道に惹かれ、2000年に移住。キタキツネの撮影をきっかけに2002年より写真家として活動を開始。写真は自然の中に生きる生命の姿を師として独学で学ぶ。北海道の野生生物を中心に始まった撮影対象は、美しい野生の姿を求めて世界中にそのフィールドを広げている。幅広い媒体に作品を提供しながら、北海道と沖縄県の2箇所を拠点とし活動している。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。

AIにより被写体を高精度に認識。AF追随で動きが速い野鳥を的確に捉える

みなさま、私のセミナーにお集まりいただきありがとうございます。写真家の野口純一です。このセミナーでは、昨年秋に登場しましたαのフラッグシップモデル「α1 II」と巡る野生動物撮影の旅をテーマにお話しさせていただきます。「α1 II」が登場して、「すごいカメラが出たな、これを持って世界を旅してみたいな」と思ったのですが、その前に簡単なテスト撮影をしてみました。まずは私が住んでいる沖縄県で撮ったエリグロアジサシという鳥の写真をご覧ください。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS + 1.4X Teleconverter 840mm相当,F5.6,1/4000秒,ISO800

アジサシは比較的速いスピードで飛ぶ鳥なので、飛んでくるところを正面から捉えるのはけっこう難しいと思いますよね。でも最新のAIによる被写体認識を備えた「α1 II」や「α9 III」を使うと、このような写真でも誰でも撮ることができる。そんな時代になりました。テストを済ませ、いよいよ世界へと旅立ちます。最初に訪れたスリランカでは、インドクジャクという非常に大きな鳥を撮影しました。下の作品のように横方向に動く大きな鳥の流し撮りも「α1 II」を使うと簡単です。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/2000秒,ISO1600

カメラが自動で鳥の頭を認識してピントを合わせてくれるので、私はただファインダーの中に被写体を捉えてシャッターを押すだけ。この写真は百数十枚、連続で撮り続けた中の1枚ですが、他の写真もすべてにピントが合っている。そんなすごい世界になりました。カメラマンは本当に楽ができる時代になったと思います。

瞳を捉えるのが難しいシーンでも賢く判断。AFはカメラに任せて撮影に集中できるのが魅力

さらに、スリランカを訪れた一番の目的であるヒョウの撮影に挑みました。ヒョウは全身の至るところに黒い斑紋があるので、どこに目があるのかカメラが判断するのは非常に難しくなります。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/640秒,ISO1600

しかし最新のAIによる被写体認識を備えた「α1 II」ならば、一発でヒョウの目にピントを合わせてくれる。ヒョウは歩くのも速い動物ですが、ピント合わせはすべてカメラに任せて撮影に集中することができます。さらにこちら。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/500秒,ISO800

拡大するとわかると思いますが、これが「α1 II」の高精細な映像表現です。非常にシャープに写っていますし、ヒョウの瞳の虹彩や毛の1本1本までしっかり描き分けている。AIの被写体認識による正確なピント精度があるからこそ、この解像感が生きてくるということですね。この写真、実はヒョウがじっと私を睨んでいるわけではありません。ヒョウも猫と同じように自分の毛皮をなめて毛づくろいをするのですが、その動きの中で一瞬だけ視線が私と交差する瞬間があるんです。そこを狙って撮っていくという、私がよく使う手法です。この撮り方をする場合は、ずっと瞳にピントを合わせ続けて待つ必要があります。以前は自分でフォーカスポイントを動かしてピントを合わせていたので失敗することも多かったのですが、「α1 II」ならピントは完全にカメラ任せにして、自分はいつか来る視線をひたすら待ち、合った瞬間にシャッター押すだけです。こちらも同じく一瞬を捉えた作品です。暗い森の中をクマが歩いていて、ところどころにスポットライトが当たるように木漏れ日が差しています。その細いスポットライトがクマの目に当たる瞬間を狙って撮影しました。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,ISO3200

クマの体は完全に陰になっていますよね。顔に光が当たって、次の瞬間にはもう次の影に入ってしまう。ここもタイミングを計って撮る必要がありますが、やはり大事なのは目にピントを合わせ続けること。陰に入ってしまっても黒いクマの瞳を認識して高精度で捉え続けてくれました。

秒間30コマの連続撮影とプリ撮影で不意に訪れる決定的瞬間も撮り逃さない

次はチドリという小さな小鳥を撮影しました。とてもかわいらしい鳥ですが、けっこう激しく喧嘩をしているところです。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS + 1.4X Teleconverter 840mm相当,F5.6,1/6400秒,ISO2000

どんな状態で撮影したのかわかるように、カメラの上に記録装置をつけてファインダー像を動画で撮影したものがありますのでそちらをご覧ください。

こんな感じで一瞬です。4倍のスローモーションにしてもこれだけ激しく動いている。その中の一瞬を撮ったのが上の1枚です。これもAIの被写体認識により、バタバタと動きまわる中でも鳥にピントを合わせ続けてくれました。必ず2羽とも顔が見えて羽を広げている瞬間があるはずだという想定のもとに撮っています。ただし、これだけ動きが速いと私自身も動きを追うことができないため、ワンショットで撮るのは難しい。そんな時に生きるのが「α1 II」の高速連写です。ずっとシャッターを押し続けるのではなく、パパッと羽が広がった時に5枚程度の連写を繰り返していく感じ。後で撮影画像を見てみると、やはり撮りたかった瞬間がしっかり入っている。これが秒間30コマの高速連写のすごさです。下の作品はタイヨウチョウというとても小さな鳥です。鳥は小さければ小さいほど飛び立つ時の動きが速いもの。「羽を広げた」と思った時にはもう画面の外に行ってしまっているくらい速いです。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/4000秒,ISO6400

ですから、飛び立つために羽を広げた瞬間を撮るのは至難の業です。ただ「α1 II」には「プリ撮影」という機能が搭載されています。これは撮影者がシャッターを半押しにして待機している間も映像を記録し続けてくれる機能で、シャッターを切った瞬間から最大1秒前までをしっかりと作品として残すことができます。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/5000秒,ISO1600

上の作品はビーイーターという鳥が飛び立ち、木の枝から爪が離れた瞬間です。肉眼で見て「飛んだ」と思ってシャッターを切っても、実際にシャッターが切れるときには鳥は画面の外に出てしまう。そのぐらい速いです。でもプリ撮影を使えば、「飛んだ」と思ってからシャッターを切っても十分に間に合います。AIによる被写体認識、高速連写、そしてプリ撮影。これらを組み合わせることで、どれだけ集中しても撮るのが難しかったシーンや高度なテクニックな必要なシーンが、誰でも簡単に撮れるようになりました。次は鹿がジャンプをしているところです。今まではこうなるだろうと自分で予測して撮る、あるいは予測していても自分の反射スピードが追いつかないものを撮る、という形でしたが、この写真に関しては撮影者ですら予想していなかった瞬間を捉えてくれた1枚になります。

α1 II,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/2500秒,ISO1600

どんな状態だったかを同時撮影した動画がありますので、まずはこちらをご覧ください。

背景がきれいだったので「いいところに鹿がいるな」と思ってカメラを構えたところ、急に走り出したのでその姿を追いました。すると、地形のちょっとした変化に鹿が反応してイレギュラーな飛び方をしたんです。まさかあんな風に飛ぶとは思っていなかったので、完全に意表を突かれた感じでした。ですから、私がシャッター切ったのは完全に飛んだのを見てからです。本来ならば鹿が着地し終わってからしか撮れなかったはずですが、プリ撮影をオンにしていたおかげで予想もしていなかったシャッターチャンスをモノにすることができました。

近づくことが難しい野生動物をグッと引き寄せる超望遠ズームレンズ「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」

アメリカには、「α1 II」とともに新たな相棒として先日発表されたばかりの「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」を持っていきました。ワイルドライフを撮る者にとっては待望のレンズだったので、「やっと出てくれたか」と私も非常にうれしく思います。

FE 400-800mm F6.3-8 G OSS

ここからはこのレンズで撮った作品をご覧いただきたいと思います。まずはアメリカの南端、フロリダ州でアメリカムラサキバンという非常にきれいな鳥を撮影しました。この鳥は池に浮かぶ蓮の葉の上を歩くため、足が大きいのが特徴です。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/3200秒,ISO3200

広い池の葉の上を自由自在に動きまわるので、思うような距離では撮ることができない。しかもこの池には大きなワニが住んでいるため水の中に入るわけにもいかない。そんなに大きい鳥ではないので「もう少し近くに来ないかな」という感じの距離感でしたが、ここで活躍してくれたのが800mmのレンズです。まだ遠いと思っていた距離でもしっかりと作品として成立する大きさで撮ることができました。次はアメリカにいるチドリの仲間です。非常に小さい鳥が水辺からパッと飛び立った瞬間で、足から滴った水がまだ水面と繋がっています。これもAIの被写体認識、高速連写、プリ撮影の組み合わせで撮れた作品です。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/3200秒,ISO1600

大きな画面で見ていただくと、チドリの目にものすごい精度でピントが合っているのをご確認いただけると思います。今回の撮影で、「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」は「α1 II」の能力をフルに発揮できるようにつくられていることも確認できました。さらに、新しいレンズと「α1 II」以外のボディの組み合わせについても検証しました。下の作品は「α9 III」と組み合わせて撮ったミサゴという鳥です。

α9 III,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/4000秒,ISO3200

「α9 III」は連写がとても速いので同じようなカットを何十枚もいっぺんに撮ることができますが、ほとんどの画像にピントが合っているほどこのレンズとの相性は良かったです。

高い解像力でシャープさと美しいぼけを両立。野生動物の撮影には最高の1本

800mmの超望遠となると、皆さんが気になるのは「写り」ではないでしょうか。800 mmで撮ったときにどのくらいシャープに写るのか。それをぜひミサゴの顔でご確認ください。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/1250秒,ISO1600

この目の周りのシャープさ。私も驚いたんですよ。800 mmのズームレンズでこんなに写っちゃっていいのかな、というぐらいものすごいシャープに写っている。解像力に関しては太鼓判を押すことができますので、安心して使っていただければと思います。そして、ただシャープなだけではなく、ぼけもきれいです。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/800秒,IS0800

上の写真は背景に広がる森の木漏れ日が大きな玉ぼけとして写っています。ズームレンズながらシャープさと美しいぼけを両立しているところも、このレンズの魅力です。さらに、こちらはクロコダイル。目の周りのシャープさ、背中に向かうにつれてゴツゴツとした部分がだんだんとぼけてきて、なだらかに、自然にぼけていく過程も素晴らしい。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/640秒,ISO200

こういった立体感を生み出す大事なところまで考えてつくられています。800mmの超望遠でAFも速い、解像力もすごい、ボケもきれい。まさに動物撮影、特に野鳥を撮りたい方にとっては最高の一本が誕生したといえるでしょう。

圧縮効果や近づけない動物のアップなど800mmだからこそ描ける世界を体感

暖かいフロリダを離れ、次は秋でもマイナス15度ほどになるワイオミング州に向かいました。バイソンに会うことがこの地を訪れた目的です。下の写真がバイソンですね。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/320秒,ISO1600

背景に針葉樹の森が写っていますが、実際にはかなり遠くにあります。これが800mmという超望遠の圧縮効果ですね。前後の奥行をギュッと縮めて圧縮して見せてくれます。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/1600秒,ISO1600

バイソンは体が大きい動物です。私は北海道のヒグマなどをよく撮っていますが、体感としてはヒグマの3倍ぐらい。体重が1トンを超えるくらいの大きさになります。上の写真でもわかるように気性が荒く、角もあるので危なくて近づくことができません。そんな時も800mmのレンズがあれば距離を保っていても、迫力のある写真を撮ることができる。運よく近づくことができればアップでも撮影できます。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/320秒,ISO1600

ものすごい解像感ですよね。毛むくじゃらですが意外とかわいい目をしていることがわかりますし、喧嘩した後の目が充血している感じや顔の細かい毛の1本1本まで、素晴らしい解像感で表現してくれます。

暗い森の中や雨の日でも安心の高感度性能。シーンに応じて画角を選べるのも利点

次は、色鮮やかな小鳥を撮るためにベトナムに行きました。ベトナムで出会ったのはこんな鳥たちです。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/25秒,ISO3200

上の写真はシナヘキサンという鳥で、まるでアニメの世界から飛び出してきたような美しさです。シナヘキサンがとまっている木の枝の下に水のしずくが写っているのがわかると思いますが、この日は雨が降っていたんです。写真は鮮やかに明るいグリーンに写っていますが、正直、撮影をやめて帰ろうかと思うほど暗い環境でした。感度を3200に上げて1/25秒で撮影しましたが、シナヘキサンの顔の周りの羽毛を見てもわかる通り、ノイズをまったく感じない素晴らしい解像感です。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 800mm,F8,1/25秒,ISO3200

上はマユグロチメドリという、こちらも非常に小さな鳥です。同じく1/25秒で撮影していますが、毎日こんな暗さなので最後の方は慣れてきて、この環境下でも顔の羽毛1本1本までしっかり写すことができました。今までだったら諦めてしまうような厳しい環境下でも、「α1」からさらに進化した「α1 II」の高感度性能で撮りきることができたのです。テレコンバーターを装着すればさらにクローズアップできます。下の作品は1.4倍を付けているので1120mmで撮影したものです。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS + 1.4X Teleconverter 1120mm,F11,1/15秒,ISO6400

ミドリシマヤイロチョウは臆病な鳥でなかなか近寄れないのですが、このようにアップで撮ることができました。感度を6400まで上げてシャッタースピードは1/15秒。1120mm、1/15秒で生き物を撮るとなると、今までは降参するしかありませんでしたが、今回は縞模様が見えるほどしっかりときれいに写すことができました。暗い中ですが、色のノリもいい感じです。さらに2倍のテレコンをつけてコンヒタキという鳥を撮影しました。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS + 2X Teleconverter 1600mm相当,F16,1/8秒,ISO6400

1600mmでシャッタースピードが1/8秒ですから、もう笑うしかないですよね。祈るようにしてシャッター切りましたが、大画面で見ていかがでしょうか。これだけ写れば十分だと思いませんか。写真展で大きなパネルにしてもまったく問題がないクオリティです。そして、ズームレンズの一番の特徴は焦点距離を選べるところです。下の写真は焦点距離が588ミリで、単焦点レンズにはない中間の焦点距離になります。このようにシーンに応じて最適な画角で撮影できるのはズームレンズのメリットです。

α1 II,FE 400-800mm F6.3-8 G OSS 674mm,F8,1/100秒,ISO1600

ズームレンズの中には、よく言われる「中間の写りがあまり良くない」ものも残念ながらあります。でも上の写真を見ていただくと、中途半端な焦点距離でもラングールという猿の毛1本1本までしっかり解像して、背景もキレイに表現してくれています。さまざまなシーンで高性能を維持して画像の破綻がない。だから安心して使っていただけると自信を持っておすすめできるレンズです。今回はいろいろな国で撮影した作品をご紹介しましたが、「α1 II」と「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」は絶対的に自信を持っておすすめできるセットです。私自身もこのレンズ1本を担いで、また世界のあらゆる野生動物の撮影に出かけたいと思います。

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