法人のお客様 教育ソリューション WORKS 早稲田大学

早稲田大学

AIを駆使した
DXソリューションを
実際の教育現場で活用

早稲田大学では、2032年の創立150周年を見据え、2012年に策定した中長期計画『WASEDA VISION 150』、および2020年に発表した『WASEDA VISION 150 AND BEYOND』を推進するべく、次世代型教室環境とオンデマンド講義環境の充実によって、学生の学びの多様性を支え、学習機会の最大化をめざすキャンパス整備に取り組んでいます。また、2024〜2026年度の3か年は「DX拡大期」と位置づけ、情報化重点施策を実施。その中でソニーも早稲田大学とともに、産学連携による新たな教育技術の開発に向けたさまざまな取り組みを行っています。

講義映像のオンデマンド活用が促進される昨今、コンテンツ制作量の増加に伴い、教育現場では収録した講義映像をより効率的に活用するためのさまざまな課題が生じています。こうした課題解決のため、デジタルキャンパスコンソーシアムの取り組みの一環として、ソニーのAI映像解析サービス「A2 Production」(以下、AI解析サービス)を活用いただいています。今回は、活用するサービスの内容とその中で得られた結果について、早稲田大学 大学総合研究センター 所長 長﨑 潤一教授、大学総合研究センター 井上 史子教授、大学総合研究センター兼情報企画課 梅澤 孝之様にお話を伺いました。

* 早稲田大学DCC|早稲田大学デジタルキャンパスコンソーシアム

『AI解析サービス』における
4つのプログラムを構築

早稲田大学 大学総合研究センターは、『WASEDA VISION 150』の施策の一環として2014年に設立されました。教育、研究、経営の質的向上に資する自律的・持続的な大学改革を推進するため、大学の理念に基づき、高等教育に関する研究および授業方法の企画・開発・普及促進とその実践の支援をミッションとしています。今回、大学総合研究センターの協力のもと、AI解析サービスが映像管理工数の削減や効率的な学びの促進にどれほど寄与しうるものか、実際の映像コンテンツ制作業務において活用が期待される4つのプログラムを構築し運用いたしました。

自動チャプタ分け(章立て)、ダイジェスト映像・要約テキスト生成、フィラーワード除去動画の自動生成、小テスト案の自動生成 自動チャプタ分け(章立て)、ダイジェスト映像・要約テキスト生成、フィラーワード除去動画の自動生成、小テスト案の自動生成

『AI解析サービス』の操作画面

プログラム 1 自動チャプタ分け(章立て)

90分〜100分の講義映像を約10分ごとのチャプタに分割し、タイトルを付与することで、学生は復習する際に見たい箇所を探しやすくなります。しかし、実際には労力もかかるため実現できていません。この編集作業の負荷軽減を図るため、AIが映像を自動で分割し、各チャプタにタイトルも生成するプログラムを実施しました。

長﨑教授「AIが行ったと言われなければ、教員がチャプタを手動で区切ったのかと思えるほど違和感のない仕上がりでした。チャプタに付けられたタイトルも、多少の修正は必要なものの、ほとんどそのまま使用できるくらい精度が高かったです。これなら教員の負担を軽減できそうだと感じました。」

プログラム 2 ダイジェスト映像・要約テキスト生成

シラバスには講義概要文が掲載され、学生の科目選択の一助となっています。また、中には授業の内容を紹介する動画を作成し、シラバスに掲載している教員もいます。そうした教員のサポートとして、事前に収録した映像をもとに、ダイジェスト映像と概要文の参考例を生成するプログラムを実施しました。

長﨑教授「作成された映像を見ると、編集も自然に感じましたし、高い精度で要点を抽出した動画にまとまっていて驚きました。また概要文も、私が作成したものと比較しても遜色のない仕上がりでした。これを活用すれば、教員が自ら講義のダイジェスト映像や概要文を作成する手間を軽減できるのではないかと思います。」

井上教授「少し厳しめの意見になってしまいますが、私が行った講義の映像から作成したダイジェストを見ると、専門的な内容の部分が多く取り上げられていて、とても難しい授業をしているように学生には見えるかもしれないなと感じました。可能ならば、より講義の楽しさや教員の人柄が伝わる映像になるよう改善されると良いと思います。」

プログラム 3 フィラーワード除去動画の自動生成

フィラーワードとは、「あのー」や「えー」などといった言い淀みのこと。こうした不要な部分を自動でカットし、聞きやすさの向上をめざすプログラムを実施しました。

長﨑教授「フィラーワードは絶対になくした方がいい、と言う先生方も少なからずいらっしゃいます。それがあると、オンデマンドで受講している学生にとって、やはり非常に聞きにくい映像になってしまいます。フィラーワードをカットする前と後で聞き比べてみましたが、カットする前にはもう戻れなくなるくらい、格段に聞きやすくなっていました。また、映像全体の時間が短縮できることで、アーカイブ容量の節約にも貢献できるのではないかと思います。」

プログラム 4 小テスト案の自動生成

学生の理解度を測るため、講義の内容をもとに複数の選択肢から正しい文章を選ぶ小テスト。その中で、誤りとなる選択肢の作成に時間がかかり、教員の大きな負担となっていました。そこで、講義の映像からAIが誤答も合わせて参考生成するプログラムを実施しました。

井上教授「複数の誤答文を一から作成するのは本当に大変です。ここでも教員のチェックは必要ですが、AIが自動でさまざまな誤答文の候補を考えてくれるのは大変助かります。その中から適切なものを選んで手を加えることで小テストが作成できるのは非常に楽でした。」

AIを活用したオンデマンド講義の
さらなる進化と発展に期待

長﨑教授「私の所属する考古学コースでは、社会人向けの授業を土曜日に行っているのですが、中には県外から新幹線や飛行機で通われている人もいます。今後さらにオンデマンド講義の効率化が進むことで、そうした受講生の負担軽減にもつながっていくのではないかと考えています。また、オンデマンド講義の浸透で、教員がより多くの時間を研究に割けるようになるというメリットもあります。私自身、長期休暇以外の期間でも2週間のフィールドワークの日程を確保することができるようになりました。今後も、たとえば実習・演習は対面で、知識共有型の講義はオンデマンドというようにバランスよく使い分けていきたいと思っています。」

井上教授「世界の大学では、いち早く授業にAIを取り入れる試みが多く行われています。日本の大学でもAIを積極的に使っていくことが求められているのではないでしょうか。よくわからないからといって敬遠してしまうことは発展の妨げにもなりますし、何事も使ってみなければ、改善点も見えてきません。使用しながら改善を繰り返していくことで、授業の在り方も変わっていく可能性があると考えています。世界と伍していく学生を育成していくためには、私たち教職員も技術の進化に順応していかなければいけないと感じます。その上でソニーには、教室で行われる授業のライブ感がオンデマンドでもより伝わるような技術の開発を期待しています。」

梅澤様「コロナ禍以降、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型教育が浸透していく中で、大学側としましても、学生の学びの質を上げつつ、先生方の映像編集の業務をサポートできる施策はないかと考えていました。そうした中、ソニーから今回の提案をいただき、非常にありがたかったです。今後も引き続き、ICTを活用したより良い教育環境の提供をめざしていきたいと考えています。」

他の教職員へ『AI解析サービス』による結果を報告する様子

今回、4つのプログラムの活用を通して、使用する映像によって精度に差が出たり、改善の余地があったりするものの、教員の負担軽減につながる面も確認できました。この結果を踏まえ、ソニーはこれからも早稲田大学とともに、さらに効率的なオンデマンド学習用コンテンツの作成に寄与するソリューションの開発を進めてまいります。
また、映像制作に広くご利用いただけるクラウドサービスとして、Amazon Web Services(AWS)を活用したスケールアップにも対応いたします。

写真左から、早稲田大学 大学総合研究センター 所長 長﨑 潤一教授、大学総合研究センター 井上 史子教授、大学総合研究センター兼情報企画課 梅澤 孝之様

新たな次世代型教室に
高性能なリモートカメラを設置

AI解析サービスの活用のほか、次世代型教室としてリニューアルが行われた早稲田キャンパス3号館の2つの教室において、ソニーはPTZオートフレーミングカメラ『SRG-A12』を納入。アクティブラーニングなどの授業収録に活用いただくことになりました。SRG-A12は、独自のAIアナリティクスによる「PTZオートフレーミング機能」を搭載。カメラが自動で教員や登壇者を追いかけ、自然な構図、かつ高度なカメラワークを無人で行えると共に、高精細な画質性能により、品質の高い講義コンテンツ制作への活躍が期待されています。

ソニーは、こうしたリモートカメラをはじめとした製品・サービスを幅広く展開し、より効率的な講義映像の収録から、AI映像解析を駆使したコンテンツ制作まで、より柔軟な学修環境の整備や次世代のキャンパスづくりをトータルにサポートいたします。

早稲田キャンパス3号館202、203教室に設置されたPTZオートフレーミングカメラ『SRG-A12』

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